オンラインデートアプリ、米国と日本で違うの?コロナ後の米国アプリを探る。

袖山 研一

コロナウィルスによる感染病の大流行は、様々な領域で新たな技術の登場や成長しつつあった技術の進化を促進している。その中でも今回は人工知能(AI)をマッチングアルゴリズムの要素技術として使用し、コロナ前後で興味深い変化を遂げているサービスの一つ、オンラインデートアプリについて紹介する。

就職活動・転職活動はマッチングの一例であり、自分の性格、思考、経験、キャリアプランなどの「個人の特性・適性」と募集しているポジションや企業文化などの「職場との相性」を考えてマッチングを行う。

一方、オンラインデートでは軽い気持ちで友達を作りたいという人から一生のパートナーを見つけたいという真剣な思いの人がいることから、様々な目的でアプリを利用するユーザがいる背景があり、特に結婚相手を探しているようなユーザにとっては、マッチングの仕方・質、ユーザインタフェースやユーザエクスペリエンスを向上させる技術、他ユーザとのコミュニケーションを促進するプラットフォームとしての工夫が求められる。

本ブログでは、特に日米のオンラインデートアプリの違い、米国オンラインデートアプリのコロナ前後での進化に着目しながら2020年7月末現在の最新情報を交え紹介する。


目次

  1. オンラインデートアプリ(マッチングアプリ)とは?

  2. 日本とアメリカのアプリの違い

  3. コロナ前後でのアプリの進化

  4. まとめ


1. オンラインデートアプリ(マッチングアプリ)とは?

出会いを求める男女を結びつけるアプリまたはインターネットサービスのこと。

よくあるサービスの流れとしては、多く分けて3ステップ。①プロフィール登録、②相手を検索する、③気に入った相手に“いいね”(LIKE)を送る。お互いが気に入ればメッセージのやり取りが始まるという流れである。


2. 日本とアメリカのアプリの違い

日本とアメリカという国の国民性の違いから、アメリカでは日本以上に多様なユーザがいること、ニーズも多岐に渡ることから日本とは少し違ったアプリの特徴がある。

アメリカでよく知られている代表的なオンラインデートアプリの中には以下のようなものがある。

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a. 多目的ユーザプラットフォーム

様々な目的を持った人がいるという点では、以下のようなユーザが見受けられる。

  1. ストレートな人同士(男性を求めている女性、女性を求めている男性)が恋愛パートナーを探している

  2. LGBTメンバーが恋愛パートナーを探している

また、恋愛パートナーを探している人たちは以下のようにカテゴリーできるようである。

i. 一晩だけ過ごすのを目的の人

ii. 友達やデートする相手を求めている人

iii. 中長期的なお付き合いを求めている人

iv. 将来の結婚も意識した真剣なお付き合いを求めている人

このように同じプラットフォーム上に会するユーザが異なる意図を持って他ユーザとのコミュニケーションをとるため、一人一人のユーザが自分の目的にあった相手と話しているのかを確かめていく判断力が求められる。

また、日本で良くみられるマッチングアプリのように目的別にアプリが分かれているのではなく、特定人種のユーザが多いアプリ、LGBTによるアプリなど、中心的に集まる人のタイプによって異なるアプリが存在している 印象を受ける。


b.  フィルタリング項目の多様化

人種のるつぼと言われる、多文化からなる米国ならではの特徴としてフィルタリング項目の多様化がある。

民族、宗教、政治への見方、教育レベル、飲酒頻度といった、日本ではあまり見かけないような項目を多くのアプリで見かける。
それぞれの項目について、ユーザがどのような条件を相手に求めているのかを選択できたり、デートするかどうかの意思決定上、決定的な項目となり得るかどうかをオン・オフで切り替える機能(Dealbreaker)が提供されている。

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c. 身分証明の必要がないため、本人特定が難しい

日本のマッチアプリでは免許証のような身分証明書を求められることが良くあるようだが、アメリカのアプリはそのようなことはまずないため、本人特定が難しい、実際に本人に会ってみたらプロフィールの写真とは違う人だったということもあるようである。

最近ではプロフィール用にアップロードした写真と、登録時にその場でスマホカメラで撮影した写真とを照合し、同一人物かどうかを確認するアプリが出てきている(顔写真による分析)


d. デートコーチによる動画の配信サービス

日本ではまだまだデートコーチの存在についてあまり知られていない、またそのようなサービスを提供しているアプリは少ないのではないか。
米国ではデートコーチによる動画配信をとおして、オンラインデートのお作法、励まし、モチベーション維持など様々な観点でオンラインデートを成功に導くための手助けをしている。

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高額な手数料を支払いことでデートコーチやマッチメーカーによる本格的な恋愛、結婚サービスを受けることはそんなに珍しいことではない米国では、より中長期的にオンラインデートアプリを誰でも手の届く使用料で利用してもらうこと、広範囲なユーザにアプリを使用してもらうこと、オンラインデートの成功率を向上させること等を目的として、デートコーチサービスが出てきたものと思われる。

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3. コロナ前後でのアプリの進化

コロナウィルスの感染拡大が深刻な米国では、コロナ後にはオンラインでのコミュニケーションをサポートできるようアプリに新たな機能が追加されると共に、人の心理面でもオンラインデートへの向き合い方に変化が起きている。

米国オンラインデートアプリはコロナ前後で具体的にどう変わったのだろうか?

a. 音声、動画での会話機能が多くのアプリで追加された

パンデミックによって直接家族や友人に会うことが難しい状況になったことで、Facetime、Zoomに代表される動画での会話を家族や友達と使用する機会が増えた。これにより、ビデオチャットへのハードルが下がったことも後押しし、オンラインデートアプリ上に追加された音声、動画による会話機能はコロナ前と比べて使用頻度は確実に上がっている。

コロナ以前はテキストでのメッセージのやり取りのみが主流であったが、音声、動画での会話機能がほぼ標準機能として提供されるようになり、IGやGoogleのHangoutなどのオンラインデートアプリの外に出ることなく動画チャットを利用するユーザが増えたようである。

これによりユーザは携帯電話の番号交換も不要なため、より安心して音声、動画でのコミュニケーションを活用するようになっている。

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b. オンラインデートアプリを使用する人と時間が増えた

コロナの影響で、これまで日々の生活に追われていた人、オンラインでの新たな出会いが必要なかった人もオンラインでしか新たな出会いを持つことが難しい状況になった。

失業、業務時間の短縮、自宅勤務、外出禁止令、生活必需サービス以外の業務停止など外出できる場所と時間が極端に制約され、普段移動時間や買い物に追われていた時間が余った時間となり、自宅でゆっくりとスマホを使用する時間へと変わったようである。

結果的に、人とのコミュニケーションを求めてオンラインデートアプリ上でのメッセージを読んだり返信したりする時間が増えた。


c. オンラインデートアプリ上での人の振る舞いがコロナ前よりも優しく、忍耐強くなった

ビジネス雑誌Economistでもコロナ後のオンラインデートに関する記事が書かれているが、コロナ後の状況では読者の皆さんも人との関わりについて様々な観点で見直すことになったのではないだろうか。

コロナウィルスへの対応として、米国民の中に少なからず社会全体で一体となって対応しようという意識が芽生える中で、他者への思いやり、譲り合い、相手の気持ちになって考えるといった心の面での変化も起きているようでる。それがオンラインデートにおいてはコロナ前よりも相手のメッセージに丁寧に返信する、辛抱強く相手のことを知ろうとする、忍耐強くオンラインデートアプリでの人との出会いを持とうと努力するといったことにつながっているようである。

The Economist: Casual sex is out, companionship is in
https://www.economist.com/international/2020/05/09/casual-sex-is-out-companionship-is-in

4. まとめ

今回のブログでは、人種、宗教、政治観などの多様なバックグラウンドに対応するため、米国のオンラインデートアプリでは幅広いユーザニーズに対応できるような仕組みが実現されていることを紹介した。

また、コロナ後に起きている環境の変化(外的要因)、また人との関わり方への気持ちの面での変化(内的要因)によってアプリも進化していることがわかった。

これは、家族、知り合い、同僚、人生のパートナーといった身近な人の存在意義、重要性、関わり方などをコロナ前よりも深く考える中で、人々が自分自身の価値観、求める要素、将来の目的等についてじっくりと考えて、チェックリストのようなハードクライテリア(年収、年齢、身長、体重、外見)だけではなく、ソフトクライテリア(思いやりや気遣いができるか、精神的に強いつながりを感じられるか、生活スタイルが合うかなど)についてコロナ前よりも重視するようになっているのではないかと考えられる。

角度を変えると、自宅勤務が主流になっているアメリカでは、リモートで仕事を行う職場でパフォーマンスの出るチーム体制を構築するために、採用時のマッチングにおいてもコロナ前以上にソフトスキル(直接会ったことがない人とすぐに打ち解けられたり、スクリーンの向こう側の相手の気持ちを汲み取った議論ができたり、チームメンバーのプライベートな時間や出来事などのリスクを考慮した業務計画を提案できるなど)が重要な要素となっていくのではないだろうか。

そのような中で、これからAIがマッチングという分野でどうさらに発展、進化を遂げていくのか興味深い。

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